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カッパ淵の不思議

 遠野市土淵町にある、カッパの狛犬で有名な常堅寺の裏には、小川が流れています。

 この小川がうっそうとした茂みに覆われたところが、カッパ淵です。
 遠野の郷には、カッパが出る淵、いわゆる河童淵がいくつかあります。
 その中で一番有名なのが、常堅寺裏のカッパ淵です。

カッパ淵では、少年がカッパの捕獲に挑戦していました。

 ところで、遠野の郷の河童淵のカッパに関しては、「遠野物語」の第58話に記されていますし、この話が一番有名ですね。

 小烏瀬川の姥子淵の辺に、新屋の家という家あり。ある日淵へ馬を冷しに行き、馬曳の子は外へ遊びに行きし間に、川童出でてその馬を引き込まんとし、かえりて馬に引きずられて厩の前に来たり、馬槽に覆ありき。家のもの馬槽の伏せてあるを怪しみて少しあけて見れば川童の手出でたり。村中のもの集まりて殺さんか宥さんかと評議せしが、結局今後は村中の馬に悪戯をせぬという堅き約束をさせてこれを放したり。その川童今は村を去りて相沢の滝の淵に住めりという。
○この話などは類型全国に充満せり。いやしくも川童のおるという国には必ずこの話あり。何の故にか。

「遠野物語」第58話

 なお、遠野物語に出てくる河童淵の一つ、姥子淵(おばこぶち)は、この常堅寺裏のカッパ淵から約5kmほど離れた所にあるようです。

カッパ淵

 さて、カッパ淵の岸辺には、カッパ神を祀った小さな祠があります。

小さな祠

 子持ちの女性が、お乳が出るようにと願をかけると叶う、といわれています。
 願掛けには、赤い布で乳の形を作り、この祠に納めるのが習いとされています。

胡瓜でカッパを捕獲します。

 カッパを捕まえるためには、カッパ捕獲許可証が必要です。
 密漁はいけません。

遠野は、交番もカッパです。(遠野駅前交番)

 ちなみに、常堅寺裏のカッパ淵の付近には、平安時代中期の武将、安倍貞任の一族の館があったと伝えられており、このことについて、「遠野物語」の第68話に伝承が記されています。

 土淵村には安倍氏という家ありて貞任が末なりという。昔は栄えたる家なり。今も屋敷の周囲には堀ありて水を通ず。刀剣馬具あまたあり。当主は安倍与右衛門、今も村にては二三等の物持にて、村会議員なり。安倍の子孫はこのほかにも多し。盛岡の安倍館の附近にもあり。厨川の柵に近き家なり。土淵村の安倍家の四五町北、小烏瀬川の河隈に館の址あり。八幡沢の館という。八幡太郎が陣屋というものこれなり。これより遠野の町への路にはまた八幡山という山ありて、その山の八幡沢の館の方に向かえる峯にもまた一つの館址あり。貞任が陣屋なりという。二つの館の間二十余町を隔つ。矢戦をしたりという言い伝えありて、矢の根を多く掘り出せしことあり。この間に似田貝という部落あり。戦の当時このあたりは蘆しげりて土固まらず、ユキユキと動揺せり。或る時八幡太郎ここを通りしに、敵味方いずれの兵糧にや、粥を多く置きてあるを見て、これは煮た粥かといいしより村の名となる。似田貝の村の外を流るる小川を鳴川という。これを隔てて足洗川村あり。鳴川にて義家が足を洗いしより村の名となるという。

「遠野物語」第68話

 遠野の郷には、不思議がいっぱいです。
 おでんせ、遠野へ。

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